いつつばぶろぐ

どうでもいいことを, いかにややこしく書くか

日本語における「2回目」の特殊性

【問】

ひとたび(一度)及び みたび(三度)を考えれば 本来は「二度」であるはずの「ふたたび」, 2回目だけ特別に「再び」という漢字があるのはなぜか?

  

【問の補足】

・ひとたび 及び みたび以降にはそのような特別な漢字は存在しない.

・ふたたびとは意味的に「ふたつ- たび」と考えてよい.

 

【考えられる答え】

2回目を意味する「ふたたび」には確かに「再び」と「二度」の書きがある. しかし「一度」及び「三度」以降とは異なり, 単なる「二回目」ではなく「前回につづいてもう一度」という意味をもたせるために, 特別な漢字を充てたと考えられる.

このことは英語で説明するとわかりやすい.

「再び」は「再」という字に見られるようにagainであり, 一方「二度」と書く場合はtwiceである. twice「二度」はあくまで 2回 であり, againのように「1回目があったあと もう1回」という意味を持たせることは難しい.

このように区別される. 

ひとたび及びみたび以降に特別な漢字が充てられていないことも, 同様に英語で考えればよい.

英語での回数表現は 1回目がonce, 2回目がtwice, 3回目以降は three times, four times と続いていく. twiceはagainで置き換えられるが, N timesを他の1単語で置き換える用法はあまり見られない.

 

 

 

【答えの補足及び考察】

 

結論から言えば, 意味の区別はそれほど明確ではなく「再び」を「二度」と表記したところで何も間違いではない. ただし文脈上の使い分けは推奨され, 与える印象も異なってくる.

 

<辞書よりの引用>

 

ふた-たび【再び/二度】

1. 同じ動作や状態を繰り返すこと. 副詞的にも用いる. 「-の来訪」「-過ちを犯す」

2. 二番目, 二度目.

 

辞書には「再び」と「二度」の明確な用法の区別は無い.

辞書上では, 言葉は意味音節の切れ目(正確な言い方がわからないけど)にハイフンを置いた形で掲載される. 「再び」は「ふた-たび」となっていることから, 送り仮名の切れ目と意味音節の切れ目が異なる位置にあるが,  これはまあ単なる送り仮名の問題であろう. 送り仮名については深追いしない.

なお, 辞書には類語として「再度(さいど)」があるがこれは漢字を見るにagain, すなわち「再び」のほうに近く, さらに「再度」を「ふたたび」と読むことはできない.

(「再び」の送り仮名が「(ふたた-)び」であることから, 「再度」を無理に訓読みすると「ふたたたび」となり2.5回ぶんになってしまう).

 

 

<「再び」と「二度」の違いなど>

 

① 「再び」と「二度」のもっとも大きな違いは何か?驚くべきことに(おおげさ), それはイントネーションである. ぜひ声に出して発音してみてほしい.

「再び」は「ふ↓た↑た→び→」(「うわばき」と同じ)「二度」は「ふ↓た↑た↓び↑」(「しらたき」と同じ)になる.

アクセントすなわち強弱で単語の違いを表す英語とは異なり, 日本語はイントネーションすなわち音程の違いで語を区別する. 方言などもこの論理に依っている. 「高価」と「硬化」の違いのように, 極端に言えば イントネーションが違えば別の語なのである. このことからも2つの「ふたたび」は意味で区別されると思ってよい.

 

② 「再び」には「ふたたび」以外の読みは無いが, 「二度」の「ふたたび」は訓読みであるから, 音読みをして「にど」と読むことができる. (湯桶読み及び重箱読みを考慮するなら訓々読みと音々読みである)

 

③ 「二度」のほうは【問】でも記したように, n度(nは自然数)で一般化できる. 一方の「再び」は一般化できない, すなわち特殊系と考えられる.

 

④ また, 文章が否定形になった場合, twiceの意味はほぼ消失する.「二度と〜ない」という呼応の副詞(懐かしいワードである)を考えれば, 英訳はnever...againであろう.

ここで興味深いのは, 「再び〜する」を否定するとき「再び〜しない」ではなく「二度と〜しない」と言う方が自然であり, しかもこのとき読み方は「ふたたびと〜ない」ではなく「にどと〜ない」ということである.

これについては「二度と」という言葉が, 「にどと」という読み方とともに あるひとつの副詞として一般に浸透しているからだと考えられる.

 

⑤ 使用頻度は, 2回目を意味するときでさえ 圧倒的に「再び」のほうが多い. すなわち「ふたたび」で「二度」を使うのはよほどtwice「2回」の意味を強調したいときのみに限定されると考えられる.

 

 

<「再」という漢字について>

 

「再」は象形文字であり, その成り立ちは「ひとつのものを持ち上げることによって 左右ふたつの足も同時に上がる」である. ここから「ある1つの事柄が起こると, それに重ねてもう1つの事柄が起こる」を意味する「再」ができた, とある.

 

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しかしながら「ひとつのものを持ち上げることによって 左右ふたつの足も同時に上がる」とはどういった状況であろうか?よくわからない.

 

ちなみに,「再」は小学5年生で習う漢字である.

奇しくもちょうど僕が小学5年生のとき, 社会科見学でゴミ処理場に行った. そのときの感想文やまとめ発表用の模造紙に 「再利用」だの「再使用」だの(俗に言う3Rである) 何度も「再」という漢字を書いた覚えがある. もしかしたら, 小学5年生でゴミ処理場の見学をさせるために「再」という漢字を習わせるのかと錯覚するほどである.

 

 

<once, twice, three times...> 

 

【答え】の最後の方の補足として.

英語での回数表現で面白いのは, 回数表現と全く同じ単語で「倍数表現」も可能だということである.

2回と2倍が同じ言い方というのも考えればヘンな話だ.

ちなみに, 【答え】で「 N timesを他の1単語で置き換える用法はあまり見られない」と言ってしまったが, 英語では「3回目」にのみ特別な表記が存在する.

それは Thrice である. 読めない. これは英語圏でも死語であり まず使わないと思ってよいそうだ.

 

 

<その他>

 

「再び」及び「2回目」 に関する日本語のフレーズを他にひとつ紹介しておく.

 

「二度あることは三度ある」(ことわざ)

この場合の読みは ふたたび/みたび ではなく にど/さんど である. はっきりとした理由は知らないが, 本来は前者で読むところを, あえて後者にすることで「にどあることは・さんどある」と七五調にする目的があると思われる. ことわざは, もともと口伝で継承される言い回しであるので 語のリズムがかなり重要視される. 日本語が七五調を好むことは俳句短歌を例に出さずとも 言うまでもない. 

 

 

【答えに基づく余談】

againという意味の「再び」については, 英語の接頭辞の話が興味深い.

例えばreconfirm「再確認する」は文字通りconfirm「確認する」に「再び」を意味する接頭辞re- がついたものである.

この用法は他に, reborn「生き返る」(re- +born), reproduction「再生産」(re- +production), record「記録する」(re- +cor「心」: 再び心に宿せるように)などが挙げられる.

しかし接頭辞re- の用法は「再び」だけにはとどまらない. 以下に接頭辞re-の主な意味と具体例を列記する.

 

*後方のre-

reject「拒絶する」(re- +ject「投げる」:後ろへ投げる)

revolution「革命」(re- +volution「回転」:かき回しひっくり返す)

*強意のre-

resolve「決心する」(re- +solve「解決する」)

*反対に のre-

react「反応する」(re- +act「作用する」)

reverse「反対に」(re- +verse「向きを変える」)

 

英語の単語を覚えるにあたって語源から理解するという手段は有効であり, 語源というか語の分解を追記した受験用単語帳というのも多く存在する.

しかし接頭語及び接頭辞は山ほどあり, そのひとつひとつが多義的である以上, 全ての語源を網羅するのは不可能で, 丸覚えしたほうが早い場合もある.

頻出の接頭辞くらいは覚えておいたらアドいかもしれない.

re- の他にはco-(共に), pro-(前の),  pseudo-(偽の), 接尾辞で言えば -ology(-学の)などなど.

大学では英語をやらなかったというか カリキュラム自体は存在しても 高校の頃ほど詰め込んだり真面目にやったりしなかったので, あっという間に忘れてしまった.

 

 

【おわりに】

 

日本語にとどまらず, 言語というものは考え出すとキリがない. 

だからこそ面白いとも言える.

僕は中高とさんざんやった英語も受験期をすぎればもう忘れてしまい, それどころか日本語も怪しい身であるが, 多言語スピーカー(スゴリンガル)や 言語学研究者の方々の努力及び好奇心は尊敬に値するものである.

いつかふたたび, 気になった日本語があれば記事を書いてみたいものである.

——— この場合の「ふたたび」はagain「再び」と考えてよいが, とくに三回目以降の記事の存在を強調し暗示したいのであれば twice「二度」を使ってもいいかもしれない.

 

こんな感じで正直そんなに区別しなくていいやろ, というのが本音である.

 

書いて思ったけどあんまり面白くないしけっこうどうでもいいし, 何のためにこの記事書いたんだか. さながらシェフのきまぐれブログである. Twitterの字数制限が10,000字になり実質のリミットが撤廃されるとこういう記事も1ツイートに収納されてしまうのだろうか?

Twitter140字制限撤廃の件については 少し前にタイムライン上でさんざん議論されたのでここでは改めて述べはしないが, ひとつ言えるのは, 俳句や短歌に見られるように 字数の限られた短文で紡ぐからこそTwitterなのであり, だからこそ言語別ツイート量ランキングで 圧倒的母数を誇る英語に次いで日本語が2位となるまで, Twitterが日本文化に浸透したのであろう, ということである.

 

論が逸れかけたので, 今回はここまでとする.

 

 

【参考資料】

http://dictionary.goo.ne.jp/jn/193128/meaning/m0u/

http://gogengo.me/roots/44

http://www.kanji-jiten.com/kanji/kanji-507.html

http://okjiten.jp/kanji835.html

http://www13.atpages.jp/shimapucchi/page159.html